中小企業診断士・ITコーディネータの大澤真介です。
今年最初の投稿で、「25分でStripe連携ツールを作った」という記事を書きました。
正直に言うと、あれは全然すごくないです。YouTubeやSNSを見れば、「AIエージェントが完全自動化!」「バックグラウンドでずっと動いてます!」みたいな、もっと派手な事例がたくさん上がっています。
私のツールは、比較すると遥かに初歩的。悪く言うと、低レベル。
でも、おかげさまでスキの数以上に、色々なところから好意的な意見をいただきました。
なぜだろう?と考えて、気づいたことがあります。
それは、2026年のAI活用で本当に求められているのは、「すごいこと」じゃなくて「やってみること」なんだ、ということでした。
今日は、最新のデータと私自身の体験を元に、その理由を解説します。
「完全自動化」の罠
YouTubeを開けば、こんなタイトルが並んでいます:
「AIエージェントで業務が完全自動化!もう人間いらない!」
「24時間365日、AIが勝手に稼いでくれるシステム作りました」
「これであなたも不労所得!」
すごいですよね。私も見ます。「へー、こんなことできるんだ」と思います。
でも、その動画を見終わった後、あなたは何をしますか?
「すごいなー」で終わりませんか?
私も同じです。「すごいけど、自分にはできないな」と思って、終わります。
一方、私の「25分でStripe連携ツール」の記事には、こんな反応をいただきました:
「これなら自分もできそう」
「週末にやってみます」
「実際に試してみました」
この違いは何か?
「すごい事例」は憧れを生むけど、「やってみたい」を生まない。
「地味な事例」は憧れを生まないけど、「やってみよう」を生む。
そして、データが示すのは、AI活用で成功する企業を分けるのは「すごいことをやる能力」じゃなくて「まずやってみる姿勢」だということです。
データが語る「やらない理由」と「やった結果」のギャップ
ある中小企業調査(静岡県中心の111社対象、2025年7月実施)のデータを見て、興味深いことに気づきました。
【2025年最新】中小企業のAI導入実態調査!111社の回答から見えた「成功する企業」と「失敗する企業」の決定的な違い | BuddieS(バディーズ) 驚きの事実:AI導入で効果を実感する企業は94%、しかし投資額が多いほど満足度が下がる逆転現象が発生 AIを導入したいけど ai-buddies.jpサンプル数少なく参考ですが、大筋では多くの中小企業に当てはまるのではと思います。
導入企業の94.1%が効果を実感している
この数字、すごくないですか?
ほぼ全ての企業が「やってよかった」と言っている。失敗しているのは、たった6%です。
でも、同じ調査にはもう一つの数字があります。
中小企業全体でAIを導入しているのは42.3%だけ
つまり、半分以上の企業は「まだやっていない」んです。
ここに大きなギャップがあります。
やった企業の94%:「成功した」やってない企業の58%:「様子見」
なぜ「やらない」のか?
企業がAI導入をためらう理由として、コストへの懸念、セキュリティリスク、リテラシーやスキル不足が挙げられる
分かります。私も中小企業診断士として、色々な経営者の方とお話しする中で、よく聞く不安です:
「うちみたいな小さい会社に、AIなんて使えるんですか?」
「お金かかるんでしょ?」
「専門知識がないから、難しそう」
「セキュリティが心配で…」
全部、もっともな不安です。
でも、実際に導入した企業を調査すると、意外な結果が出ています。
「やってみた」企業が発見したこと
「多額の投資をした企業ほど効果実感度が高いのでは?」というのが、一般的な予想。でもそれとは異なる結果が出ています。
つまり、「お金をかけたからうまくいった」わけじゃないんです。
さらに、導入済み企業の95.7%が生成AIを活用している。ChatGPTやGeminiみたいな、誰でも使える既存ツールです。
そして、積極推進企業では効果実感率100%、「やってみる」姿勢が成功の重要な要因。
つまり:
- 高額投資は不要
- 専門知識も不要(既存ツールを使うだけ)
- 「やってみる」姿勢さえあれば、ほぼ100%成功する
これ、「やらない理由」として挙げられていた不安と、全部逆の結果なんです。
私の「25分ツール」が評価された理由も、ここにある
私のStripe連携ツールは:
- 投資額:追加投資0(SaaS版のClaude Proで作成:今流行りのClaude Codeではありません。)
- 専門知識:不要(Claudeに聞きながら作った)
- 時間:25分
それでも、好意的な反応をたくさんいただきました。
なぜか?
「自分にもできそう」と思ってもらえたからです。
YouTubeの「完全自動化!単純作業があっというまに解決!」みたいな事例は、すごいけど、「うちには無理だな」で終わります。
でも、「25分、無料、専門知識不要」なら、「それなら試してみようかな」になります。
本当の問題は「技術」じゃなく「心理的ハードル」
中小企業の42.3%が既にAI導入済みで、その94.1%が効果を実感している一方で、大企業では43.3%がAI活用を推進しているのに対し、中小企業ではわずか23.4%という別のデータもあります(調査時期や定義が違うので数字に幅がありますが、傾向は同じです)。
関係情報:情報通信関連:情報通信白書令和7年版 www.soumu.go.jpつまり、大企業に比べて中小企業の方が「まだやっていない」率が高い。
でも、実際にやってみた中小企業の成功率は、めちゃくちゃ高い。
これが意味するのは、「中小企業にはAIは難しい」じゃなくて、「中小企業は最初の一歩を踏み出すのをためらっている」ということです。
技術的なハードルじゃない。心理的なハードルなんです。
「未導入」の裏で起きていること
残りの58%の「未導入」企業でも、実は現場では誰かが使っている可能性が高いと考えています。
いわゆる「野良AI」「シャドーAI」。
私のセミナーでも、野良AIを使っている方に話を聞いたことがあります。
その人が言ったのは、
「会社のためとかじゃなくて、自分の業務のクオリティを上げて、楽に成果をあげたい」
この言葉、すごく本質だと思いました。
人間の本音
「会社の生産性向上のために」
「DX推進のために」
こういう建前、正直どうでもいいんですよね。従業員にとっては。
本音は:
- 残業したくない
- もっと楽に仕事したい
- でも成果は出したい
- 評価されたい
そのために、こっそりChatGPTを、Geminiを使う。
これ、全然悪いことじゃありません。むしろ、めちゃくちゃ健全です。
「使って良いよ」じゃなく「使ってみようよ」
ここで、経営者が取るべき態度は何か?
ダメなパターン:「使って良いよ」
これは「許可」です。上から目線です。
「セキュリティに気をつけてね」
「業務時間内で適切に使ってね」
「成果が出たら報告してね」
従業員の反応:「面倒くさいな。だったら今まで通りこっそり使おう」
良いパターン:「使ってみようよ」
これは「誘い」です。一緒にやる姿勢です。
「俺も試してみたんだけど、面白いな」
「君もこれ使ってみて、どう?」
「失敗しても全然いいから、色々試してみようや」
「うまいやり方あったら、教えて」
従業員の反応:「社長も使ってるんや。じゃあ堂々と使おう」
この違い、分かりますか?
経営者がやるべきこと
だから、経営者がやるべきことは:
1. 自分がまず「やってみる」
社長が使ってないのに、「これからはAIだから、使え!」は通じません。
まず自分で触ってみる。失敗してみる。「あ、これ便利やな」を体感する。
2. 従業員に「使ってみようよ」と誘う
「使って良いよ」じゃなくて「使ってみようよ」。
許可じゃなくて、誘い。一緒にやろう、という姿勢。
3. 安心して使える環境を準備する
ここが一番大事かもしれません。
「使ってみようよ」と言うだけでは、従業員は不安です:
- 「どのツールを使えばいいの?」
- 「個人アカウントでいいの?会社で契約すべき?」
- 「お客さんの情報、入力していいの?」
- 「失敗したら怒られる?」
だから、経営者がやるべきことは:
- ツールを決める:ChatGPT Teamでも、Gemini(Google workspace)でも、何でもいい。会社として使うツールを決めて、契約する。1人あたり月数千円の投資です。
- ルールを決める:「顧客の個人情報は入力しない」「機密情報は避ける」。まずはシンプルなルールでいい。
- 失敗を許容する:「試して、ダメだったら報告して。怒らないから」と明言する。
「多額の投資をした企業ほど効果実感度が高いわけではない」という一般的な予想とは異なる結果なので、高額投資は不要です。
1人当たり月額数千円のツール契約と、2〜3ページのシンプルなガイドライン。
これだけで「環境」は整います。
4. 「自分が楽になるために使っていい」と明言する
「会社の生産性のために使え」じゃない。
「君が楽になりたいなら、使ってみたら?定時で帰れるよ」
そう言える経営者の会社が、強い。
私の失敗談
実は、私も最初は「環境整備」をサボっていました。
「Claudeいいよ」「ChatGPT便利だよ」と言うだけ。
でも、周りの人に「どのプラン使えばいいの?」「個人契約?会社契約?」と聞かれて、「ああ、そこまで考えてなかった」と気づきました。
GUULY開発をしているときも同じでした。「こういうツール作ろう」と言うのは簡単。でも、「誰がどうやって使うのか」「エラーが出たらどうするのか」まで考えないと、結局使われない。
「やってみなはれ」は、「無責任にやれ」じゃないんです。
「やってみよう。失敗したら一緒に考えよう。そのための環境は俺が整える」
それが、経営者の仕事だと思います。
2026年はなぜ「分かれ道」なのか
AnthropicのCEO Dario Amodeiが、先週のダボス会議で衝撃的な発言をしました。
Amodeiによれば、同社の研究者の一部は、AIが書いたコードのみで次世代Claudeの開発を進めており、ほぼ100%のコードをAIが書いているとのことです。
AIが、AIを開発する時代が、もう来ています。
Amodeiは次のように警告しています。
「人類は計り知れない力を手にしようとしているが、私たちの社会的・政治的・技術的システムがそれを扱う成熟度を持っているかは極めて不明」と警告しています。
Humanity is about to be handed almost unimaginable power, and it is deeply unclear whether our social, political, and technological systems possess the maturity to wield it
重たい言葉です。
でも、私が思うのは、「試されている」のは「最新技術への適応力」じゃないということです。
試されているのは、「臆病な自分に『やってみなはれ』と言えるかどうか」です。
私がAntigravityで体験したのも、まさにこれでした。「このツール、ちゃんと動くか確認して」と言ったら、勝手にブラウザを開いて、動かして、スクリーンショットを撮って報告してくれた。
AIは確かに進化しています。でも、その進化を「怖いから様子見」と立ち止まる企業と、「とりあえず触ってみよう」と一歩踏み出す企業とで、差が開きます。
サントリー創業者・鳥井信治郎の言葉を借りれば、「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」。
2026年、分かれ道は「技術力」でも「予算」でもなく、「やってみる姿勢」でした。
私も、臆病だから
「やってみなはれ」
これは、私が一番好きな言葉です。
でも、この言葉を他人に言う前に、私は自分に言い聞かせています。
自分が臆病になって、動けなくなった時に。
Stripe連携ツールを作る前夜
先週の記事で、「25分でStripe連携ツールを作った」と書きました。
でも、正直に言うと、作る前は迷っていました。
「今から始めて、うまくいかなかったらどうしよう」
「記事にして、『大したことないじゃん』って言われたらどうしよう」
「もっと勉強してからの方がいいんじゃないか」
臆病になっていました。
そんな時、自分に語りかけたんです。
「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」
25分でした。たった25分で、動くツールができました。
もし、あの時「もっと勉強してから」と言っていたら、今でも作っていないと思います。
Antigravityも同じ
GoogleスプレッドシートのAI関数で試して、うまくいかなかった時。
「やっぱり難しいな。自分には無理かも」
そう思いました。
でも、「やってみなはれ」と自分に言い聞かせて、Antigravityに切り替えました。
結果、動きました。この記事を書いている今も、裏で動き続けています。
GUULYも、あの言葉があったから
2018年、資金繰り管理SaaS「GUULY」(当時はGurinosuke)を開発すると決めた時も、めちゃくちゃ怖かったです。
不安だらけで、とある公的支援機関に相談に行きました。
そこで言われた言葉が、今でも忘れられません。
「会計ソフトはfreeもマネーフォワードもある。いまさら素人が出しても」
きっと、良かれと思って言ってくれたんだと思います。でも、私にはナイフのように刺さりました。
帰り道、迷いました。「やっぱり、やめた方がいいのかな」
でも、自分に言い聞かせたんです。「やってみなはれ」と。
結果、GUULYは今も続いていて、私の「中小企業診断士×ITコーディネータ×経営者×開発者×中小企業のサラリーマン出身」というアイデンティティを形作っています。
もし、あの時「いまさら素人が」という言葉に負けて、やめていたら、今の私はいませんでした。
(この時の詳しい話、もし興味ある方がいたら、また書きますね)
あなたも、臆病ですよね?
「AI、使ってみたいけど…」
「自分にできるかな…」
「失敗したらどうしよう…」
分かります。私も同じです。
今でも、新しいことを始める時は不安です。
セミナーをやる時も、note記事を書く時も、新しいツールを試す時も。
「うまくいかなかったらどうしよう」
「批判されたらどうしよう」
「失敗したら恥ずかしい」
そう思います。
でも、そんな時に自分に語りかける言葉があります。
「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」
データが後押ししてくれる
中小企業でAIを導入した企業の94.1%が効果を実感している
積極推進企業では効果実感率100%、「やってみる」姿勢が成功の重要な要因
データは明確です。「やってみた」企業は、ほぼ全て成功しています。
失敗しているのは、「やらなかった」企業です。
「いまさら」なんて、ないんです。
「いまさら」と思った瞬間が、実は「いま」なんです。
やっぱり「やってみなはれ」
京都で、滋賀で、大阪で、関西で商売をしてきた私たちには、もともと「やってみなはれ」の精神がありました。
2026年、AIという新しい技術の前で、私たちはその精神を思い出す必要があります。
YouTubeの「完全自動化!」に憧れるのをやめて、まず25分、何か一つ作ってみませんか?
来週も、私はまた臆病になると思います。
でも、その時また、自分に言い聞かせます。
「やってみなはれ」
そして、あなたも何か一つ、今週「やってみなはれ」。
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