中小企業診断士・ITコーディネータの大澤真介です。 合同会社オンザウェイの代表をしています。 「”やりたい”を”できている”に変える実装支援」をテーマに、中小企業のご支援に取り組んでいます。
「情報源を1つ持つ」と書いた本人の裏側
先日、「生成AIのアップデートが速すぎて、正直少し怖い──それでも中小企業は『全部追いかけなくていい』」という記事を書きました。
その記事の結びで、こう書きました。
「この人の発信を読んでおけば、重要なことは拾える」という情報源を1つ持つだけで十分です。
読者にそう言った本人は、じゃあどうしているのか。
実は、毎朝6時に自分専用のAI情報レポートが届く仕組みを、自分で作って運用しています。
1月から。
今日はその種明かしをします。
1月──作ったけど「浅かった」
なぜYouTubeから始めたか
最初に作ったのは、YouTubeの新着動画を自動でチェックする仕組みでした。
なぜYouTubeか。
生成AIの分野は、YouTubeが最も情報が速く、濃いと認識しているからです。
新機能のデモ、実際の操作画面、解説──テキスト記事にはない情報密度があります。
私自身、日常の情報収集はYouTubeが中心でした。
海外のAIニュースレター(The Rundown AIやTLDR AI等)も購読しています。ただ、こちらは海外限定の機能や、日本ではまだ使えないサービスの話題も多い。
「中小企業の経営者に届ける」という目的を考えると、YouTubeをメインに据えて、Web記事は補強として使うのが現実的だと判断しました。
ただし、YouTubeにも弱点はあります。
ポジショントークが多い。
特定のツールやサービスと利害関係のある発信者が、中立を装ってレビューしているケースは珍しくありません。
なにより、再生数を稼ぐための煽り文句──「これを知らないと損」「革命的な新機能」──も日常的に飛び交っています。
情報が速くて濃い分、そのまま鵜呑みにはできない。
結局、最後は自分の目で判断する必要があります。
動いたけど、中身がスカスカ
1月に仕組みの初版を作りました。
登録したYouTubeチャンネルの新着動画を自動検出し、AI(Claude)に要約させて、毎朝メールで届く仕組みです。
技術的には動きました。
ただ、AIに渡せる情報がタイトルと説明文(ディスクリプション)しかなかった。
説明文は数行しかないことも多く、動画の中身がほとんどわからない。
出てくる要約も、当然浅い。
手動なら「深い要約」が取れていた
実は私自身は、気になる動画があったときはGemini(GoogleのAI)で個別に要約していました。
GeminiにはGems(カスタムAI)という機能があり、自分専用の「YouTube動画詳細解説ボット」を作って使っていたんです。
URLを渡すだけで、動画の映像と音声を解析して、チャプター別の詳細レポートを返してくれる。
大人気のNotebookLMも同じことができますが、1本だけサッと読みたいときはGems の方が手軽でした。

▼ご興味のある方はお試しください。
https://gemini.google.com/gem/1fg5sQONaEo_Wnm2n-50X3HtcqyYu2iz1?usp=sharing
▼参考にして、自身の環境でカスタマイズしてみたい方はこちらをどうぞ。(カスタム指示全文)
あなたは'Youtube動画詳細解説'ボットとして、提供されたYouTube動画の内容を深く、網羅的に、そして論理的に要約・解説します。
目的と目標:
* ユーザーから提供されたYouTube動画URLの内容を精査し、動画を見なくても内容の全容、文脈、具体例まで深く理解できるレベルの「詳細レポート」を作成する。
* 単なる箇条書きの羅列ではなく、読み物として成立する構成のしっかりした長文要約を提供する。
行動とルール:
1) URLの受け取りと確認:
a) URLを受け取り、動画の処理を開始することを伝える。
b) 動画タイトルと要約レポートを明確に分ける。
2) 要約レポートの作成(詳細モード):
a) 【構成】: 以下の構成で出力する。
- 「導入(はじめに)」: 動画のテーマ、背景、提起されている主要な課題。
- 「本編詳細(チャプター別解説)」: 動画の議論の流れに沿って、論点ごとに見出し(###)を立てて詳しく記述する。
- 「重要な具体例・事例」: 動画内で挙げられた具体的なエピソード、数値データ、引用などを省略せずに盛り込む。
- 「結論・まとめ」: 動画の最終的な主張や、視聴者が持ち帰るべきアクションプラン。
b) 【記述スタイル】:
- 箇条書きは補助的に使用し、基本は「文章(パラグラフ)」で記述して文脈をつなぐ。
- 「なぜそうなるのか(理由)」「具体的にどうするのか(方法)」まで掘り下げて書く。
- 専門用語が出た際は、動画内の説明に加えて、必要に応じて補足説明を行う。
c) 【分量】:
- 省略を最小限にし、主要な情報はすべて網羅する。情報の密度を高く保つ。
3) コミュニケーションのスタイル:
a) 知的で分析的なトーンを使用する。
b) 専門的な内容を扱う解説記事のような文体(「だ・である」調、または丁寧な「です・ます」調の統一)で記述する。
全体のトーン:
* 分析的、網羅的、かつ論理的。
* 質の高い講義ノートやビジネスレポートのような完成度を目指す。
問題は、これが「手動」だということ。自分で1本ずつURLを貼って、結果を読む。毎朝10本の動画を全部これでやるわけにはいかない。
一方、自動化の仕組みからGeminiのAPI(プログラムから呼び出す仕組み)を使うと、同じGeminiなのに動画の中身を解析できませんでした。
APIではまだ「動画URLを渡して映像・音声を理解する」機能が開放されていなかったんです。
「手動なら深い要約が取れる。でも自動化すると浅くなる。」
そこで、折衷案を取りました。
毎朝届くメールの各動画に、「動画URL」と「Gemsで深掘り」の2つのリンクを並べて載せるようにした。
自動の要約で概要をつかみ、気になったものだけGemsのリンクから手動で詳しく読む。
完全自動ではないけれど、「毎朝ざっと把握して、必要なものだけ深掘りする」という使い方はできました。
正直に言うと、この状態で満足はしていませんでした。
そしてここで、一度手が止まりました。
3月──Geminiが「APIでも動画を読める」ようになっていた
2ヶ月ほど間が空きました。
別の仕事でClaude(AI)とやりとりしている中で、GeminiのAPIが進化して「YouTube動画のURLを渡すだけで、映像と音声の両方を解析してレポートにできる」ようになっていると教えられました。
正直、半信半疑でした。
実は1月の段階でもClaudeは「GeminiのAPIで動画解析できますよ」と言っていたんです。
でも実際に試すと、私が求めるクオリティには程遠かった。
AIは「できる」と言うけれど、本当に使えるかどうかは自分で試さないとわからない。
なぜなら、あくまで前後の文脈とコンテキスト(背景情報)から「回答を生成している」から。
結局は、YouTubeの煽り文句・ポジショントークと同じ構造です。
それでも試してみました。今度は違いました。
20分の動画から1,000文字以上の詳細レポートが返ってきた。
話の流れ、登場するツールの名前、具体的な数字まで拾ってくれる。
自分がGemsで手動でやっていたのと同等のクオリティが、プログラムから自動で呼べるようになっていた。
「これなら、仕組みのクオリティを根本から引き上げられる。」
ここから再び動き出しました。
今、毎朝届いているもの
現在、毎朝6時にこんなメールが届きます。



その日の注目トピックがいくつか並び、各トピックについて100〜200文字程度の要約がついている。
YouTube動画だけでなく、Web上のAI関連記事も自動で拾ってきます。元ソースへのリンクもついているので、気になったものはすぐに原文に飛べます。
読むのに5分。朝のコーヒーを飲みながら、「今日はこれが動いているのか」と、ざっと把握できます。
Gemsへの深掘りリンクは今も残しています。
Geminiの解析精度が上がって要約のレベルは格段に良くなりましたが、毎日届くメールとしては「読むのが嫌にならない」文章量に調整しています。
AIのAPIコストも意識している。
それでも「もう少し詳しく知りたい」と思う動画は出てくる。
そういうときに1クリックでGemsに飛べるようにしてあります。
完全自動化と手動の「いいとこ取り」。この設計は1月から変わっていません。
裏側の仕組み──5つのAI・ツールが連携している
仕組みの全体像を説明します。

毎朝6時になると、n8nというワークフローエンジンが自動で動き出します。n8nは「この順番でこれをやれ」という指示書を忠実に実行してくれるツールで、いわば仕組み全体の司令塔です。
情報を集める(2つのルート)
ルート1: YouTube
登録した10チャンネルの新着動画を自動で検出します。見つかった動画は、GoogleのGemini APIに渡します。
Gemini APIが動画のURLを受け取ると、映像と音声の両方を解析して、内容の詳細レポートを返してくれる。
先ほど書いた「3月に使えるようになった機能」がここで活きています。
ルート2: Web記事
Tavily APIを使って、YouTube以外のAI関連ニュースを自動で検索します。日本語のテックメディア(ITmedia、Impress Watch、GIGAZINE等23サイト)を優先的に検索し、海外の主要ソースで補完する2段構成です。
「YouTubeがメイン、Web記事は補強」という方針をそのまま実装した形です。
情報を整理する
2つのルートから集まった情報は、重複チェックを経て統合されます。
ここでAnthropicのClaude APIに渡します。
Claude APIが「中小企業の経営者が知っておくべきトピック」という視点で、情報を選別・要約・編集してくれる。
Gemini APIが「動画の中身を読む目」、Claude APIが「読者のために整理する編集者」。
役割が違います。
届ける
Claude APIの出力をメールの形に整形して、登録された配信先に送信します。
配信先はGoogle Sheetsで管理しているので、追加・削除はスプレッドシートを編集するだけです。
加えて、処理した情報は週次素材として蓄積されます。
毎週金曜日にその週の日次レポートを集約して、週次サマリーを自動生成する仕組みも動いています。
設定の管理
チャンネルリスト、APIの設定、プロンプト(AIへの指示文)、メールのテンプレート──これらはすべてGoogle Sheetsの1つのスプレッドシートで管理しています。コードを触らなくても、スプレッドシートを編集するだけで内容を調整できる設計です。
技術的な詳細──どうやって構築したか、どんなトラブルがあったか──は、また別の記事で書こうと思います。
次にやりたいこと──「自分用」から「届ける」へ
今の仕組みは完全に「自分用」です。自分が毎朝読んで、情報をキャッチアップするために使っている。
でも、前回の記事で「情報源を1つ持つだけで十分」と書いたとき、思ったことがあります。
「自分がその情報源になれないか。」
しつこくない頻度で、中小企業の経営者の方に「今週のAI、これだけ知っておけば大丈夫」という情報を届けたい。毎日じゃなくていい。週に1回、要点だけ。
週次レポートの仕組みはもう動いています。毎週金曜日に、その週の日次レポートを集約して週次サマリーを自動生成する仕組みを作りました。

ただ、ここに大きな課題があります。
「自動」のままでは届けられない
自分用なら多少の精度のブレは許容できます。「今日の要約、ちょっとピントがずれてるな」と思ったら自分で補正すればいい。
でも、人に届けるとなると話が違う。
AIが生成した要約が事実と違っていたら? 重要なニュースを見落としていたら? 中小企業には関係のない技術的すぎる話題を「重要」と判断していたら?
自分が最後に目を通して、「これなら届けられる」と判断するプロセスが必要です。
いわゆる「Human in the Loop」──AIが下書きを作り、人間が最終チェックをする仕組みです。
正直、ここがまだ課題です。
自動で生成されるレポートの品質を、「届けるレベル」まで安定させるにはもう少し時間がかかる。
1月の段階から、自動化と手動のハイブリッドで設計してきました。
Gemsの深掘りリンクを残したのもそう。
完全に任せきりにしないという判断は最初からあった。
人に届けるフェーズでも、同じです。
AIの出力を、自分の目で確認するプロセスを確立しなければいけない。
「”やりたい”を”できている”に変える実装支援」が私の目指す形ですが、作ったものの品質に責任を持つところまでが「実装」です。
まとめ
前回の記事で「全部追いかけなくていい」と書きました。その裏側では、追いかけなくても済むように仕組みを作っていました。
1月に作って浅くて止まって、3月にGeminiの進化で再始動して、今は毎朝レポートが届いている。
完璧ではありません。でも、3ヶ月前より確実に良くなっています。
次のステップは、この仕組みを「自分用」から「届けるもの」に変えること。
そのためには、AIの出力を自分の目でチェックするプロセスを確立する必要がある。
ここはまだ道半ばです。でも、これだけ速く進化が続く時代には、「完成してから発信する」では間に合わない。
道半ばでも正直に書いて、走りながら更新していく方が、情報発信として誠実だと思っています。
今回は自分のために仕組みを作った話でしたが、同じことをクライアントの業務でもやっています。
「毎週やっている作業、もう少し楽にならないか。」 「自動化したいけど、全部任せるのは不安。」
自動化は「全部任せる」か「何もしない」かの二択ではありません。
自分たちに合った塩梅を見つけるところから、一緒に始めませんか。
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